第16話
ジュースどころでない裕也の様子に一志は炭酸飲料を取り、裕也に残りの缶を押し付ける。
「まぁ、聞けよ。はい」
押し付けられる缶ジュースに戸惑う裕也。一志はペットボトルの栓を開ける。キャップが開き炭酸の抜ける音がする。ガードレールに腰掛けながら一志が言う。
「世の中には病院に行きたくないやつがいるわけ。特にオツムの病院にはね。テレビでいっくらうつ病特集組まれても、やっぱ偏見あるっしょ?」
ペットボトルに口をつける一志。そうしてペットボトルを持つ指先を裕也に向けながら一志は言う。
「俺は今は割り切れたけど、けど最初は死ぬほどショックだった。オツムの病院に世話んなった時。ああ、もう俺の人生終っちゃったって思った。マジで終わりなんだ。この若さでなんちゅードロップアウトしたんだって、絶望ですよ」
そう言って一志はペットボトルを膝の間に落とし握り締める。裕也は目を細め無言で一志を見下ろす。一志は続ける。
「でも、死んじゃうよりはマシじゃん? わかんないけど、多分マシじゃん? だから通院することにした。って、言っても躁の時は最高にハイでキモチいいんだけどね。ギャップがひでーって言うか、うつの時は裕也と同じ」
そう言って力なく笑う。炭酸飲料を酒のように煽る一志。
そうして一気に半分ほど飲み干す。
「俺が半分酒でごまかすのって、商売のための薬のストックを溜めるためでもあるけど。だけど、どこか自分をマジキチとは違う場所に置いておきたいというか、なんつーか悪あがき的なもんかも」
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