第15話

そう言って裕也は両手を組み、唇をかみ締める。渋い顔をした裕也と対象的にあっけらかんとした一志。

「けど、薬つっても合法ドラッグだぜ。お国のお墨付き」

「合法だけど、一志が売るのは違法じゃん」

裕也は口を尖らせ言い返す。

「そうかもねー」

一志は口端でヘラ笑う。

「そうかもねじゃないよ、ちゃんと悪いことって自覚しないと!」

語調の荒くなる裕也に一志は鼻で大きくため息をつく。

「一志!」

そして、怒る裕也を尻目に最寄の自動販売機にまでブラ歩く。小銭を投入口に入れ、押されるボタン。一回、二回。腰をかがめジュースを拾い上げる一志。

「裕也は悪いこと悪いことって言うけど、俺は悪いことをしてるって気はしない。むしろいいことをしてるって思ってる、どっち飲む?」

裕也に缶コーヒーと炭酸飲料、二本のジュースを見せる。

「一志!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る