第10話

裕也の心配顔など我関せずといった一志。さっさと座り机にもどり、A4サイズの水色のノートを開くと、薬の数を「ひぃ、ふぅ、みぃ…」とカウントし始める。それらをボールペンで細かくメモると。今度は、薬を小袋につめはじめる。マジックでそれぞれに金額が書かれた小袋だ。

「不安だなー変な副作用がでなけりゃいいけど」

裕也の言葉を尻目に、今度は黒いセカンドバッグを取り出し、小袋を詰め込みはじめる一志。作業の合間にひょいと裕也を振り返り言ってきた。

「ところで、うつだけじゃなくって、躁の時もアルコールが効くって知ってた? 上げ気分が和らぐらしいよ」

「知らない」

「ほらぁ! やっぱ、俺の方が断然詳しいんじゃん! ネットで散々調べたんだから。やっぱアルコールは病人の頭にいいんだよ。だから、オレにとってはほぼ薬だよ」

そこまで言うと、一志は大きな音をたて勢いよくカバンのジッパーをしめる。そうして、カバンの上に白マジックで書かれた『No.1』という文字を景気よく一発はたく。

「はい、おしまい!」

そうして軽やかに腰を上げると、上着を羽織りだす一志。

「さてっと、行きますかぁ!」

「どこへ?」

「いいとこ! 裕也も暇ならくる?」

怪訝そうな裕也ににかっと笑う一志。

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