第9話

一志は唖然とする裕也を尻目に、半欠けとなった錠剤を元の銀ケースにしまいこむ。

「お前もやってくれりゃ、もっと薬貯まるピッチあがるのにさー。安く買うよ!」

「もーいいよ」

ため息をつきつつ、自らの薬をごくごくまっとうに水で飲んだ裕也に、片手で額を押さえあえぐように言う一志。

「あーほら、頭のてっぺんに気持ちいいの来たぁ~。あ~~う~!」

「お酒が回ってるだけでしょ?」

冷ややかな裕也。突き放した目線。

「相乗相乗! アルコールは薬と似たような効果あるから、足りない分の補填。ねぇ、ところでいちいちつっかかってくんねぇ! あれだねぇ、裕也くんはちょい生真面目すぎるね。みんなこんなもんっしょ! アバウトアバウト」

アルコールの回りきったにやけ顔で裕也の右肩に手をのせてくる一志。吐く息がもう既に酒臭い。その一志の腕を払いのけながら向き直る裕也。そうして一志に必死に言い聞かせる。

「先生は、アルコールはセロトニンだけじゃなくって、ドーパミンも出ちゃうからダメだって言ってたよ。効き目のバランスが崩れて、いっつもいっつも安定した効果が得られないし、中毒になるし、お酒と薬は全然違うって。今はたまたまうまくいってるけど、わかんないよ!」

「いーのいーの、オレがよければ」

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