第6話

「五万、一万、一万、三万…」

座り机一杯に広がる山のような精神薬の銀セルを不穏な言葉とともに仕分けをしている一志。ここは一志のアパート。大きな山が減り、小さな小山がいくつも出来あがってくる。その様子を脇で眺め、半ば呆れ顔の裕也。マンガ雑誌をめくりかけの手を止め横槍を入れる。

「すごい量だね、どうやったらそんなバカみたく溜まるの?」

「俳優並みの演技かしら?」

一志が手を止め振り向く。実にうれしそーな顔で。そうしてすぐさま、一志は両手の指をからめ、天を仰ぎ見ながらオーバーリアクションであえぐように言う。

「せんせー、オレほんっと眠れないんです。もうかれこれ一週間も空が白々くるまで一睡もできなくて! とか」

かと思えば、一志が今度はがっくりとうなだれ、ため息とともに憂鬱に吐き出すように言う。

「はぁ…、なんか死にたくなってきた。せんせい…、あの世に行くとみんな幸せになれるってホントなんすかね? とか」

ますます呆れ顔を増し、左右に首を振る裕也。そんな裕也の様子などお構いなしに得意げな一志。人差し指を一本立てながら解説を打つ。

「これで一発! びびった医者がほんっとみるみる薬を出すから。やつら普段しぶいけど、まーさすがに病院から死者は出したくないようだね。ふふふ」

「あくま! さいってー!」

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