1-2.一志参上!
第5話
「わぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあああっ!!」
突如、古アパートに響き渡る叫び声。寝汗をぐっちょりかきながらベッドから跳ね起きる裕也。息を切らし顎にかいた薄ら汗を拭う。
「また例の夢ですか? 毎度毎度、よく叫ぶねぇ!!」
脇の二十二型の液晶テレビ前、ゲームのリモコンを手に胡坐をかいた一人の少年が苦笑う。橘一志、十七歳。ソフトモヒカンの金髪頭に赤いTシャツ・白い五分丈の短パン、黒い二重ライン入り。お世辞にも趣味がいいとはいえない。が、両目はくりっとした二重まぶたで印象深く整っており、人目を引く風体をしている。俗に言うイケてるメンズ。
一志は冷ややかなまなざしで裕也をちらり見、言葉を続ける。
「イッタイどんな悪夢だか知りませんが、そろそろいい加減にしてもらえませんかね? ちょいウザなんですけど」
「ぐっ……なんだよ。そんな嫌味な言い方しなくたって」
容赦ない一志の突っ込みに思わず言葉つまるも不満げに言い返す裕也。すると、もっと不満げな顔で一志がリモコンを放り捨てる。
「お前の悲鳴のセイでゲームオーバー! 初の快挙レコードでした。手元が狂うまでは」
そう言って一志はテレビ画面をあごで指し、レースゲームの無残なゲームオーバー画面を見せる。爆音火炎とともに、真っ赤なレーシングカーが吹き飛び、燃えこげたタイヤが跳ね転げた。
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