第4話

一人羽交い絞めている守山は歯がゆそうにぼやく。

「なに、みんなで観察してんだ。ほら土下座して俺らに謝れ、でないともっと痛ってー目に遭わせるぞ」

壁を背に一人離れ全てを傍観し、たたずんでいた須藤が裕也の目の前に立ちはだかり言い放つ。両腕を開放され、やがて言われるがまま震えながら土下座する裕也。

「こ、こいつホントにやりやがった!」

噴き出す中田。

「フルチンで土下座。しかも便所で、ちょーウケる。記念撮影しとこう」

ティラリン! ティラリン! ティラリン! 取り出した携帯で裕也を何枚も撮影する守山。そうして土下座をし終え、トイレの床タイルに突っ伏している裕也を残し須藤を含む四人は和気藹々話しながら立ち去ってゆく。去りついでに、山下が裕也のズボンを出入り口脇のごみ箱に乱暴に突っ込む。遠くから裕也の耳元へと届いてくる言葉。

「どうせなら、女子トイレの方が面白かったかもね?」

守山の声。受け答える中田。

「んじゃ、次せんこーにチクったら、女子トイレでスカート履かせてフルチン撮影ってことで」

「わーぉ! 変質者でつかまっちゃう!」

残酷な言葉が次々と気ままに飛び交う。一人トイレに膝を折り、うなだれ取り残される裕也。押し殺したようなすすり泣き、くやしさのあまり歯をくいしばり、タイルに爪を立てる裕也。プチプチと小さく音を立てはがれそうになる爪。

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