3.義足

第9話

スポーツ義足を義足師にはめられる涼花。車いすから立ち上がる。


「ほとんど、すぐ軽くなら走れるよ。走ってみな」


義足師の言葉に涼花は恐る恐る足を踏み出した。ジャンピングする足の感触。涼花は言われるままに少し走る。早くはないが、確かに走れる。少し走って、涼花は再び義足師のもとに戻ってくる。喜びを訴える。


「走れます。走れます」


義足師は涼花の精悍な笑顔に言葉を告げる。


「私たちの世界では、100m10秒をはじき出している人がいます。それは一般健常者より早い」


素晴らしき言葉。涼花ははしゃいで、飛び跳ねる。周囲に障害者ばかりがあふれているせいか、涼花は自分だけが特別不幸だとは思わなくなっていた。


「どうすれば、早く走れますか?」


涼花は魅力的な瞳で義足師を見つめる。その精悍さにどぎまぎする義足師。それを察し、カウンセラーが笑う。


「涼花君! ランナーデビューだ!」


カウンセラーは涼花の肩をたたく。


「はい!」

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