第7話

涼花は一発ではこの現実を受け入れられなかった。片足を失っても、前向きに生きる人々。車いすをものともせずに飛んで走る人々。


当分は、無言でカウンセラーと共に過ごした。カウンセラーも何も言わなかった。涼花の与えられた現実があまりにも厳しすぎるからだ。


だけど、10日後、涼花がカウンセラーに口を開いた。


「私、走れるかな? 私、ランナーになりたい」


涼花の頭をカウンセラーは撫でた。


「カウンセラーがこんなことをするのは間違っているけど、本当は君を抱きしめたいくらいだよ」


とカウンセラーは言った。涼花はカウンセラーと共に競技用の義足を見に行く。本当はカウンセラーはここまでするべきではないけれど、カウンセラーは勤務先の精神科に直談判して、涼花を救いたいと叫んだ。そうして、その後、涼花と常に行動を共にするようになる。


「バネみたい。こんなのが足につくの?」


涼花は感嘆した。人間の足とは到底思えない、バネみたいに作られた義足を見つめる涼花。


「本当に早く走れるようになるよ。100m走なら、13秒台を軽く弾き出せるから」


と義足師が笑った。そうして、涼花とカウンセラーは一緒に別の義足を見せてもらった。普通に歩く用だ。


「ロボットみたい」

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