第17話

「あ…」




「取れたんだよ! 取れたんだ!」




「さっき、病院で貰った薬を塗ったから…」




そう、呟いた早苗をよそに清貴は手放しで大喜びしている。清貴のあまりのはしゃぎ様に、早苗はフクザツな心境だった。




(さっき、ずっとこのままで居たいって言ったくせに…)




そんな早苗の心中を知ってか知らでか、清貴は早苗を思いっきり両腕で抱きしめた。早苗が驚いた眼差しで清貴を見上げると、清貴はにっこりと笑った。




「やっとお前を、真正面から抱きしめられる!」




そう言うと清貴は再び早苗を抱き寄せる。早苗は清貴の笑顔があまりにも無邪気だったので思わず吹き出してしまった。




「何だよ」




「何でもない~」




キョトンとした清貴の首に早苗は思いっきり抱きついた。早苗の背中を抱きしめた清貴が耳元にささやく。




「どう、これから?」




「プラトニックラブは?」




イタズラっぽく清貴が笑う。




「そんなもの糞っ食らえだ」




「そうね」




二人は笑って軽く口づけた。




早苗が窓の上から覗いている我々に気づいて、意味深な笑みを残すと、カーテンを閉めた。どうやら、部外者はお断りらしい。やがて、部屋の明かりが消え、二人の影も消えた。

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