第2話

「…仕事なのね……」




早苗の歪んだ口からこぼれた台詞が、清貴を冷たく突き放す。




「だって、仕方がないじゃないか。俺だって好きで残業してるワケじゃないんだ。他のみんなが必死に成って働いている時に、俺だけ彼女とのデートなので帰らせてくださいって、言えってか?」




つくづく要領の悪い男である。嘘でも「君だよ」と言えばいいのに、そこで何故本当の事を言う。お陰で痴話喧嘩はますますヒート。




「あなたは冷たい人だわ」




「君の方もかなりの分からず屋だな」




こうなってしまうと、もはや売り言葉に買い言葉である。




「どうやら、私たち別れるしかないようね」




「ああ、そうだな。キーはありがたく返して貰うよ」




そういうと清貴は机の上のキーを、むしり取ってポケットに突っ込む。




「じゃあね」




「ああ」




作者としては、自分のキャラクター達を不幸にしてしまうのは不憫ですが。二人が別れたがっているので、このまま実況を続けます。




「何だよ、早く行けよ!」




「そっちこそ、その手を放してよ!」




「離れないのは君の方だろ。何だよ、まだ、俺に未練でもあるのか?」




清貴が嫌味たっぷりに。早苗をからかう。




「冗談じゃないわよ。誰が!」




そう言い返して、早苗がフト視線を落とした次の瞬間だった。早苗が突然悲鳴を上げる。




「ちょっと、アナタ! その手に持っているのは何よ!!」




「エ?」

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