第19話
別れ際、店先の扉口でしょうこが信也に握手を求めてきた。
酔い醒めかけた信也に「とって食やしないから」と冗談めかして。しょうこのやわらかい手。手豆一つない。まるで女みたいだ。普段から手入れしているのだろう。
それとも、ずっと子供の頃から野球など男の子が当たり前にする遊びを、何一つしてこなかったのかもしれない。
信也は知らない、しょうこの幼少時代など。
だけど、幼少時代、一人お人形遊びをしているしょうこを思う。一人、おままごとをしているしょうこ。母親のメイク道具で遊んでいるしょうこを思う。
信也は思う。
しょうことは、もう会うことも無いだろう。
去り際、信也はオカマ倶楽部の看板を省みる。チカチカと光るピンクのネオン。ちょっと隠微で卑猥なネオンだ。そして、そのネオンは華やかだけれど、どこか物悲しいような気がした。
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