第16話

言葉少なだが、しょうこは信也の言わんとすることを察したようだ。




「まぁ、そうかも……そんな感じ」




そうして笑う。しょうこは、信也のグラスが空になりかけたのを見計らい、新たな水割りを作りながらぽつぽつと語り始める。氷のかち合う音がする。




「僕が男でもOKしてくれた人もいるし。けど、結局僕の方があわなくって、別れちゃったけど…」




ちょっとショックだった。




別にトクベツ好かれても困るわけだが、ここはあえて自分だけと信也は言って欲しかった。なんてのは、信也のわがままだろうか?




「そんなんじゃ、男は口説けないっしょ? そこは、ウソでもあなただけって言うべきじゃねーの?」




とあらぬ事を信也は口走る。




しょうこは少し驚いた顔をして、だけどまたすぐに微笑む。その微笑みは、どこか業務めいた笑顔だと感じたのは、信也のかんぐりすぎだろうか?




「まぁ、信也さんは女専門って分かっちゃったし。うっかり口を滑らせちゃったってことで、オフレコでね。はい、水割りのオカワリ」




そう言って、しょうこは左手をグラスの底にそえ、水割りを差し出してくる。




信也は差し出された、水割りを2、3度煽ると、やがて革張りのソファーに音を立て背をもたれ込んだ。そして、大きく息をつきながら声を張る。




「そっかー! なんだかびみょーな心境だなぁ! 残念のような、ほっと一安心のような。なんなんざんしょ、このシンキョー?」

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