第16話
言葉少なだが、しょうこは信也の言わんとすることを察したようだ。
「まぁ、そうかも……そんな感じ」
そうして笑う。しょうこは、信也のグラスが空になりかけたのを見計らい、新たな水割りを作りながらぽつぽつと語り始める。氷のかち合う音がする。
「僕が男でもOKしてくれた人もいるし。けど、結局僕の方があわなくって、別れちゃったけど…」
ちょっとショックだった。
別にトクベツ好かれても困るわけだが、ここはあえて自分だけと信也は言って欲しかった。なんてのは、信也のわがままだろうか?
「そんなんじゃ、男は口説けないっしょ? そこは、ウソでもあなただけって言うべきじゃねーの?」
とあらぬ事を信也は口走る。
しょうこは少し驚いた顔をして、だけどまたすぐに微笑む。その微笑みは、どこか業務めいた笑顔だと感じたのは、信也のかんぐりすぎだろうか?
「まぁ、信也さんは女専門って分かっちゃったし。うっかり口を滑らせちゃったってことで、オフレコでね。はい、水割りのオカワリ」
そう言って、しょうこは左手をグラスの底にそえ、水割りを差し出してくる。
信也は差し出された、水割りを2、3度煽ると、やがて革張りのソファーに音を立て背をもたれ込んだ。そして、大きく息をつきながら声を張る。
「そっかー! なんだかびみょーな心境だなぁ! 残念のような、ほっと一安心のような。なんなんざんしょ、このシンキョー?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます