三章:しょうことは

第13話

「その方がてっとり早かったって言うか。だって、二人がいい関係になったときに、こんなことが分かっちゃうと、すごくとまどうでしょう? だから僕の場合は、一番最初にバラしちゃうの」




しょうこの手の元でみるみる仕上がってゆく、水割りのおかわり。そうして、グラスの結露を香水のきいたハンカチで丁寧にふき取ると両手で信也に差し出す。




しょうこの指先には可憐なネイルアートがほどこされている。ただし、出会った当初は何も見当たらなかったので、恐らくつけ爪だろう。




しばし、しょうこをぼんやりと見つめる信也。




差し出されたグラスを放置し。そうして、ぼんやり見つめついでに、まんま口を開く。やけにあっけらかんと。




「ケツ軽いね。会う前からホテルに行くこと考えちゃってるんだ」




こんなことを言うつもりなどないのだが、信也はうっかりと口を滑らせてしまう。そんな空気をしょうこが持っているのだ。にしても、こいつはかなり意地悪な言い方だ。




「信也さんもね」




眉一つ動かさず、しょうこ。そうして、しょうこはたっぷりとグロスで潤ったパールピンクの唇でこうも付け加えた。




「ま・な・み…ちゃん」

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