第6話

そう言って、彼女じゃなかった、彼は信也をその場にたたずませどこかへ消えてしまった。




信也は一人カフェの席に取り残された。とうの昔に冷め切ったコーヒーをすすりながら、すっかり待ちぼうけをくらわされる信也。




(なんて強引なんでしょう?)




信也が逃げ出すなら今だろう。しかし、信也は少年に促されるままに、カフェのテーブルに腰掛け、退屈そうに大あくびをしている。




少年の去り際のあの意味深な言葉。




それはあくまでも下世話な野次馬根性という代物だったかもしれぬ。しかし、信也の心に少年に対する興味が芽生えてきたことも確かで。




(マジモンのおホモなんて初めて見ましたよ)




ヤバけりゃ逃げればいいしとタカをくくっていたということも


あるだろう。少年の腕っ節が見るからに軟弱そうだったこともある。




(それに近いものって、やっぱ、カマファッションかしら? 男がスカート?)




「げろ、キモスぅ~!」




信也の脳裏にふと浮かぶ、少年のカマファッション。それを必死にかき消しながら信也は思う。




(けどこれは一発、記念写真くらい撮っとかなきゃ、いかんっしょ! こんなミラクル滅多に出会えませんよ。オレって悪趣味なのね?)

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