第38話
僕の突っ込みなど向こうにほったらかしで、坂口は両手を組んだまま一人酔いどれる。
「それとこれは別だ。あー! めぐりん! すんげーバリバリ自慢できるオレの友達になる予定だったのに。もう、周囲に吹いて回る予定だったのに。きっと、飲み会行ってもモテただろうなぁ……オレ…」
「く、くだらねぇ…」
一人でひたすら妄想街道を突っ走る坂口にあきれ果てた僕は頬杖をつき、あらぬ方向を向く。坂口が僕の後ろで、頭を抱え込んで悶絶している。その、背中で感じる悶絶具合に僕も途端に後ろ髪を引かれ始める。もしか、もっと他にやりようがあったのでは?
などなど一瞬にしてふくれあがる唸るような後悔の念。だけど、いや、送ってしまったものはしょうがないと、その思いを、ごり押しでねじ伏せる。そうやって一人かろうじて、平静を保っていると、坂口が僕の両肩をわしづかみ、必死の形相で迫ってくる。
「な、な、謝れ! 謝って、謝って、謝り倒せ! そうしたら、きっと許してくれるよ!な、なぁ! そうしろって、悪いことは言わねーから、な!」
坂口の言葉に、僕の中でむくむく沸き起こる懺悔と後悔の念。だけど、僕はそいつにパタンと蓋をする。鉄製の鍋蓋で。
「無理だよ」
それだけ言い捨て、僕は坂口から顔ごと視線をそらす。そらした視線の先に顔を覗き込ませしつこく食い下がる坂口。必死だ。
「あやまれって! あやまれよーーー!!」
「無理!」
僕はポーカーフェイスのまま、ふいっと再びそっぷを向く。とうとう僕以上に頭をかきむしり、叫びだす坂口。
「あーーーーーなんで、こいつはこんなにバカなんでしょうか? 神様! こいつの、この意固地な性格を何とかしてください!」
なんて、情けない坂口の声と有様。僕はそっぽを向いたまま、チラリ坂口の顔を盗み見るも、坂口と視線をバチリと合わさぬよう、すぐさま元の向こうを見やる。
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