第31話

「ところで、めぐりん、今度はドラマ初挑戦だとか?」




司会のフリに思い出したように口を開くめぐりん。




「あ、そうそう! そうなんですよ。ここで、主役! って言うとカッコイイんですけど。今回は主人公のお友達役として出ています」




そう言って、フィリップを脇に抱え、番組宣伝を始める。




「でも、個人的にはこの友達役の子の性格は好きですね。あたたかくって、優しくって。もちろん、主人公はもっともっと魅力的! ドラマは青春もので、二人の女の子の友情物語をぜひ堪能してください。恋あり、笑いあり、涙ありで、きっと10台の子には共感するところが、一杯一杯あると思います」




僕はテレビの前で硬直していた。めぐりんの画面いっぱいに広がる笑顔を見つめつつ、眉間に一本縦ジワを寄せ、小首をかしげる。パブリックな電波に、めぐりんのパブリックな言葉。だけど、僕はその公共のメッセージに僕個人へのメッセージも感じ取ってしまった。




(今のなんだ?)




今のなんだ?気のせい? 気のせいかしら? 画面越しから聞こえた、かくも意味深、だけど、かくも中途半端なめぐりんの話。僕は腕組み、眉間にしわ寄せ、しばし空(くう)を睨む。

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