六章:トラウマ

第29話

「夢なら覚めなきゃいいのにさ」




僕はベッドに横たわり、天井を見つめつつ、ぽつりつぶやく。




「覚めなけりゃ、素敵な夢で終われたのに」




偽めぐりんとの思い出はある種のトラウマだ。携帯メール、パソコンのメール、偽めぐりんとのやりとりの全てを僕は一斉に削除した。そうして、めぐりんのメールアドレスも。唯一入っていた、女の子のアドレスだがやむなし、捨てる。




そうして、その反動で僕はすっかりめぐりんを避けるようになっていた。といっても、出演するテレビ番組やラジオを極力見聞きしないようにしているだけの話だが。




まぁ、所詮ファンと芸能人との関係なんてそんなもんさ。おっとファンクラブから届く、小包の封も開けてなかったな。部屋の片隅に追いやられた小包を遠く見やりながら僕は思う。




めぐりんが悪いわけじゃない。めぐりんが悪いわけじゃない、と。それは重々承知の上、だけど、偽めぐりんの仕打ちは僕に大打撃を与えた。とはいえ、僕はこれでも大きなファンサイトの管理人だ。僕がサイトを放置して、もうかれこれ1ヶ月。いつしか沈静化したサイト。そろそろサイトの更新をしないとな。待ってるから、僕のユーザーたちも。




久しぶりに逃げずにめぐりんを見よう。小さく意気込んで、僕はチャンネルを番組に合わせる。そうして、ファンクラブの小包も開けてみる。中身を覗けば、めぐりんのフォトグラフ。




相変わらず見目麗しゅう、めぐりんの可愛いショットにでかいため息。そういえば、僕が写メを欲しがってたのを偽めぐりんに適当にうっちゃけられたよな、あれが決定打だったけど、なんて思い出してしまう。まだ、トラウマが癒えていないようだ。

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