第27話
『一年後、テレビで再会した彼女は、歌も踊りもあの当時より、ずっとずっとうまくなってて。洗練されていて、感動でした。そうして、そんな彼女が好きになりました』
めぐりんのお悩み相談に一人頭を悩ませ、首をひねり必死に返事をメールに打ち込んだ日々。
『あなたには分からないかもしれない。こんな僕の気持ちは、ちっとも分からないかもしれない。ただのキモオタだと思ったのかもしれない。だけど、僕は真剣なんです。心底、彼女を応援したいんです。めぐりんには、このままずっとアイドルとして輝いていて欲しい。ずっとずっと――そして、これからもっともっと輝いて欲しい。だから彼女の応援サイトを、僕はこれからも更新し続けます』
ゼンブゼンブまるきり嘘っぱちだったけど、だけど僕は幸せだった。とびっきり。
『あなたが本当のめぐりんだったらよかったのに。どんなにかよかったろう。残念です。そうして、すごく悲しいです。もしも、あなたに欠片でも良心だとか、人としてのココロがあるのなら、僕にもうメールを寄越さないで下さい。心からの願いです。 byシオン』
僕は打ち込んだメールを何度も読み返し、変な言い回しや、誤字脱字がないのを確認して、そうして最後のメールを送信する。僕は瞳を閉じる。オンラインに網目のよう張り巡らされた無数のライン。
幾つもの中継を経、右に左に稲妻のようじぐざぐ突き進むメール。光のよな高速で偽めぐりんに送り届けられてゆく。10分、20分、30分、1時間、2時間――返信はない。これで全て終わった。
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