第26話
『で、ふと気付いたんですが、9月といえば、シオンさんの誕生月ですよね。折角だから、発売日をシオンさんの誕生日にズラしちゃうってのも、ちょっと面白いかな? って思ってます。でも、その時は、市販の10倍くらいの代金をシオンさんからもらっちゃおうかなぁ? って。ま、それは冗談だけど。 byめぐ』
誕生日…その文字列に思わず鼻で笑う僕。いつしか僕は高笑いをしていた。もう、何もかもがうそ臭く見えてくる。
――虚城。もう、ほんとにこれで最後だ。これっきり。キレイにピリオドにしましょう。僕は身を起こし、すぐさま引導メールを打ち出した。
『僕はめぐりんが大好きです。彼女と初めて出会ったのはアキバです。出会った時の彼女は、まだぜんぜん駆け出しで、顔も名前も見たことないし、聞いたことないし、歌も踊りもホントへたくそで、必死に頑張ってるんだけど。ホントへたくそで。サインももらったけど、握手もしてもらったけど、けど、僕は元々アイドルなんかにそんなに執着するタチでもなくって。一つのアキバの思い出としてだけで、僕の中のめぐりんは、そこで止まってて、それからしばらく、彼女のことなんてすっかり忘れてました』
タイピングを繰り返すほどに走馬灯のようによみがえる。鮮明に。めぐりんとの出会い、アキバの小さなコンサート会場に溢れる熱気。掛け声。めぐりんの、ちょっぴり外した音程に、ぎこちない振り付け。
そして―笑顔笑顔――とびっきりの―笑顔。
『だけど、一年後、ある深夜番組で僕は再び彼女に再会しました。感動ですよ。あの小さなステージからずっとずっと頑張って這い登ってきたんだなぁ! と思ったら、どうしても彼女を応援したくなりました』
あの日――めぐりんからのメールに飛び跳ねて喜んだ。
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