五章:絶望的

第24話

僕はキーボードを払いのけると、両手をこぶしにし、机に何度も額を打ちつけ始める。ゴッゴッゴッ。鈍い音が辺りに響きわたる。どれほど額を打ちつけたろう? やがて、自らの額をいたぶることに飽きてしまった僕は、生ぬるい机に額を貼り付けたまま、つぶやく。




「イタすぎ…痛ってぇ……」




しばしば、机に伏せたまま痛みを帯びた額ばかりに意識を向けていた僕だが、いい加減首が凝り始め、身を起こす。そうして、冷めた薄目でディスプレイを見下ろす。額はまだじんじん痛い。僕の心も、僕の存在も、そうして偽めぐりんの存在も、全部イタイ




――僕は脇に蹴散らしていたキーボードを机の中央に寄せ、メールを打ち込み始める。額を散々打ち付けたのはダテじゃない。メールを打ち込みながらも、僕の中で次第にすべてが吹っ切れ始めたのを感じ、タイピングする手を早める。これで、ジ・エンド。喜劇は幕下ろしましょう。




『あなたの言うことは嘘ばっかりだ。新しいCDも出ないし、写真集も出ない。ゲリラライブもなかった。僕をからかっているんですか? あなたからメールが来て、嬉しくって信じられなくって、友達に話しました。そうしたら「絶対ニセモノだ」って、友達は言いました。かつがれているんだ。ネットではよくあることだって。だけど、僕はそれでもあなたを信じてた。こんな僕は愚か者ですか? byシオン』




偽めぐりんへのメールを一気に書き上げた僕は内容を見返すこともなく、すぐさま送信した。これでいい。二人の終焉へのカウントダウンが開始する。

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