四章:バレた!

第18話

坂口の言葉。僕は坂口の両手から、携帯をむしりとり抱え込む。そうしてうつむく。とまどうような苦笑いをしながら、坂口が言う。




「お前、ほんとやめとけよ。もうな、もうな、思いっきりサイト作られてんぞ。つるし上げサイト。ネットで笑いものケッテー! 悪いことは言わないからさ、てか、もう遅いかもしんないけどさぁ…もうやめとけば? ちょっとさすがに。もう、あれからどんだけ経ったっけ? 1ヶ月? 2ヶ月?」




坂口が言いたいことはよく分かる。よく分かるけど、分かりたくないこの心境。この僕のゼツミョー心理。真偽の分からぬネットの世界。うずまく嘘と誠。僕も不安を掻き立てられつい声を荒げてしまう。




「3ヶ月だよ! いいだろ? よしんば騙されてたとしても、全部オレなんだから! オレが騙されてるだけなんだから! 笑いものにされたとしても、オレなんだから、坂口には関係ないじゃん!!」




分かってる。それでも坂口とは長い付き合いだ。口は悪いし、僕をいつだっておちょくるけど、だけど、根はそんな悪い奴じゃない。心配してんだなって分かる。けど……




「そりゃ…そうだけどさ。お前……頭大丈夫? てか、こいつもこいつ。偽めぐりんもなんか、暇人ってか、暇人ってか、暇人すぎだろー!! 何がゲリラライブだか! CDだの、写真集だの、嘘八百並べて! バッカじゃねーの?!」




意固地にうつむく僕をあからさまにシカトし、坂口は青空を仰ぎ、誰に言うでもなくイラだちを吐き出す。聞かんぼうな僕にイラだっているのが分かる。分かる。けど……めぐりんは…




「こんなん真に受けて、サイトを更新してみろ! お前、折角築いてきた信用モロ無くすよ? カンペキ陥れられケッテー! ワナだろ、これ? インボーじゃね?」




そこまで言われても決して頷かぬ僕をチラ見し腕組み、巨大なため息をつく坂口。




「はー……いやーなんつーか、ネットの匿名性も罪だねぇ…いやはや、そう思いますよ。お前がそこまで言うなら、いや、もう、どうしようもないけどな。けど、オレはほんっとどうかと思うぜ。ほんっと!」




――不安だ。




そこまで坂口にハッキリ言い切られてしまうと不安だ。これまでのカッコたる僕の確信が、突如、組み上げられたトランプのように、崩れ落ちてしまう。虚構にかくもこだわり、信じたがる僕はまるでバカなのかしらん? 不安だ、ふあん。ファンなんちて。じゃない、不安だ、不安。僕は真実を知る由もなく、知るすべも持たぬ。僕はうつむき、両手で携帯を祈るよう、握り締めた。

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