第11話
僕は風呂から上がり、バスタオルでぬれた髪をぬぐいながら、空いた右手でメールボックスをチェックする。だけど、やっぱり来ていない。明日、明日、明日。明日のお楽しみ。僕はわくわくしながらベッドにもぐりこむ。こんな気持ちで布団にくるまれているのは、
子供の頃の遠足以来だ。メールはどんな文面で来るのだろう? そんな風にめいっぱい空想してみる。
そして、数時間後――
僕の目は未だギンギンにさえている。深夜3時、4時になっても一向に眠れやしない。明日も学校があるのに、こんなんじゃやばいと
羊を必死に数え始める。
(羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹……ダメだ眠れない! 羊が4匹、羊が5匹………)
頭を抱えつつ、羊を150匹も数えた頃。それでも羊のカウントが効をそうしたのか? 暗闇の中、ようようと睡魔らしきものが訪れる。困憊しきった体を布団が優しく包み込み、僕はほのかな眠りの世界にいざなわれはじめる。
(……めぐりんが184匹、めぐりんが185人、うわー、めぐりんがいっぱい。こんなに一杯めぐりんがいたら、もうこの世に他のアイドルなんて要らないや。くすくす。めぐりんが186人、めぐりんが188人……が189人……人…)
だけど、無情に鳴り響く朝の雄たけび。うつろになりかけた脳に突如突き刺さる目覚ましの音。えぐりだすようなベル音が僕に起きろとエンドレスに頭蓋骨内を駆け巡る。
僕はたまらず、腕を伸ばし、目覚ましを止めようとするも、寝ぼけきっているセイか思うように止められぬ。この目覚ましの音、ぐっすり眠れた安眠の果ての翌朝ならまだしも、まるで寝不足の体にはたまったもんじゃない。しばしの格闘の末、ようやく黙らせた目覚ましを枕脇にほおり僕はベッドの中で大きな伸びをする。カーテンの隙間から漏れ落ちる陽の光。
小鳥が鳴いている。僕は身を起こす。頭がずきずきする、内臓はぐったり、全身からは疲労臭がこみあげてくるようだ。夕べは興奮してろくに眠れなかった。
(うぅ、ひどいよめぐりん、罪深すぎるよ)
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