第8話

ツバまで撒き散らして、そんな力説しなくてもと内心思う。だけど、僕だってやっぱり坂口の言っていることに、一理あると思ってしまうわけで。というか、ほぼ、そうだろうと思ってしまうわけで。




思わず「…だよね」と相槌なんて打ってしまう。




すると拍車をかけ坂口。もー両手使ってめいっぱいジェスチャーなんかしてさ。




「そーそー。しっかも、そいつはネカマと見た。きっとむっさい男がやってんぜ。まー多少悪趣味かもしんないけどさ、いるから、そういうヤツって。ネットの匿名性フル活用してさ。だから、ネットは疑うのが基本よ!」




なんて、まるで何もかもを見てきた風に言い切る、それもこいつの悪い癖だ。だけど、坂口の言うことはスバスバ的を射てるわけで。




「…そっか、そうだよね…」




としか答えようがない僕。ますます調子付いて坂口が言う。




「そーそー。お前んトコのサイト、流行ってるしさ、ねたんでるヤツがやったか、それか、お前のあまりの入れ込み具合にちょっとからかいたくなったんじゃね?」




とはいえ、少し考え込む僕。こうまであからさまに全てを否定されると、実に面白くない。それが、例えすこぶる一理あったとしても。




そうして、僕はぽつりつぶやく。




「けどさ、彼女すごくマメなんだよね。メールが」




どうでもいい反論さ。坂口がため息をつきながら笑う。いつもの僕をほんのちょっぴりバカにしてる感じ。




「マメって、どれくらいだよ」




僕は坂口の言い草に、ちょっとだけムっとしながら、言い返す。




「僕と彼女で一日一往復してる。つまり毎日?」




一瞬言葉を無くす坂口。この坂口の表情の変化に、僕は「あれ?」と思った。なんだ?今の? この坂口の表情の変化って。しかし、すぐに坂口は口を尖らせ突っ込んでくる。




「けど、メールを始めてどれくらいだよ」




「一ヶ月ちょいくらいかな?めぐりんってのが発覚してからは、まだレス書いてないけど。メール来たの昨日だし…」

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