第13話
冴子はそう言って男に笑う。男もつられて笑う。やがて冴子は遠くを見つめながら語りだす。
「あの当時は、あの頃が一番幸せだった。彼は、将来、結婚しようね! って私にいつも言っていたのに。でも、私が子宮をわずらって、手術で子供を産めない体になったと知った途端、離れて行ってしまった」
冴子はスカートの裾を握る。
「その時、私思ったんです。私は、ずっと彼に愛されていると思っていたけど、彼は本当に優しくって、本当に心の温かい人だとずっと思っていたけど、それは本当だったのか? って。彼は実はものすごく冷たい人だったんじゃないかって」
そこまで言うと冴子は男に悲しい笑いをする。
「図々しくも、思ってしまったんですよね? でもね、大人になった今だと、彼のキモチも分からないでもないんですよね。ああ、きっとそうだったんだろうな。って今なら分かります」
男は終始無言だ。無言で冴子を見つめる。
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