四章:冴子の告白
第12話
男のアパート近くの公園のベンチで佇みながら二人。
冴子が口を開く。
「私、5年前に婚約してたんです。婚約していたって言っても、10台の頃、交際していた恋人とだから、本当におままごとのような二人だけの婚約です」
黙って冴子の言葉を聞く男。
冴子は言葉を続ける。
「彼がバイトで必死に稼いだお金で、誕生日に指輪を買ってくれて。宝石も何もないすごくシンプルな指輪だったけど、嬉しかったなぁ……」
冴子は遠く風になびく木々を見つめる。
「恋愛ドラマみたいに、彼がこう、すっとはめてくれて」
冴子は白い指を前に出す。
「ううん、すっとははまらず、悪戦苦闘して。ようやく。後で知ったことなんですけど、指輪って、ぴったりのサイズって、簡単に指にはまらないんですってね。だから、結婚式の指輪って、普通は1サイズ大きなものを用意するんだって、後で知って」
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