三章:私に教えてください
第10話
冴子は服を身にまとい男と寄り添いながらつぶやく。
「あなたの笑顔を見たとき、私は驚きました。どうしてそんなに笑っていられるのかと、どうしてそんなに素敵な笑顔を浮かべられるのかと、そうして、どうして私はこんなに沈んでいるのだろう、頑なになっているのだろうと」
男は黙って冴子の言葉を聞く。
冴子は言葉を続ける。
「この差はなんだろう? その秘密を知りたい、そう思いました。そうして通いつめて。いつ見てもあなたは笑っていた。どんなガソリンスタンドに行ってもこんなに素敵な笑顔には出くわしたことがない、いいえ、どこにも見当たらなかった」
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