第9話

二人は唇を重ねる。




男はぎこちなく腕をうごかし、女を抱き寄せる。しばし、深い抱擁と口付けを交わす二人。静かな時が流れる。庭の軒先で、小鳥の飛び去る羽音が響く。あれはすずめだろうか?




やがて男は冴子の体を後ろへ押しやると言った。




「洋服を着てください」




冴子はそっとつぶやく。




「いいんですか? そこから先は必要ないですか?」




「あなたの気持ちは分かりましたから。僕はそれだけで、もう十分です」

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