第6話

「……」




冴子は無言で男を見返す。




「だったら止めてください」




男は吐き出すように言う。




「世の中には、体の自由の利かない僕を指して哂うものがいます。好奇な目で眺めるものもいます。だけど、そんなのはもう慣れてます。むしろ、僕にとっては、あからさまな同情の方がキツイ。僕だってあなたたちと同じ人間です」




冴子は黙って男の言葉を聞く。




「子猫を拾うのとはワケが違います」




男は言葉を続ける、苦悶にゆがむ男の顔。




「また、拾う気もないのに子猫にミルクをあげる。それは本当の優しさでしょうか? こんなことを言うと失礼だけど、あなたはご自分の優しさに酔っているだけでは? 子猫に何度もミルクをやり、次のミルクを期待させ、だけどあなたはもう現われない。子猫はあなたと出会ったことで、味あわなくていい落胆と絶望を再び味わうことになる。こんなのはハナから無視して通り過ぎるよりも、よっぽど残酷だと思う」




言葉の全てを吐き捨てた男は唇をかみ締めた。





「同情からこんなことができると思います?」

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