第3話

男と出会ったとき、冴子の全身に衝撃が走ったのだ。




体が不自由なのは美奈子に言われるまでもなく分っていた。あんなにあからさまな!




だけどそれ以上に、冴子が心奪われたのは男の笑顔だ。用事をききつけていくる際、いつもいつも見せてきた男の笑顔。




『窓をふきましょうか?』




『灰皿に捨てるものは?』




そんないつものそんな素通りするようなあたりまえの景色、だけど、男の全ては新鮮だった。




(なんて屈託のない笑顔! 私はいまだかつて、こんなに素敵に笑う人は見たことがない!)




冴子は心で叫んでいた。




なんて笑顔!




なんて笑顔!!!




くったくがないだけじゃない。無邪気ともちがう。だけどだけどこの人は、なんて顔で笑うの?




(私はいまだかつて、こんなに素敵に笑う人は見たことがない!!!)

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