第32話

「私はいい男と結婚するの! 私を好きでいてくれて、私を幸せにしたいってそんな風に思ってくれる男よ!!」




瞳を細める王子。私は叫び続ける。




「そうして、彼は私と二人の子供のために、必死に働くの! 毎日額に汗して働くの! そうして、彼の手で私を幸せにしてくれるの!! 私はそんな彼を手助けして、共に寄り添い生きて行くのよ!!」




そんなことはちっとも思っていなかった。これまで思ったこともなかった。だけど、王子を見ているとそんな言葉がつらづらと浮いてくる。




言い切ると同時に私の心は途端にとまどいを帯び始める。だけど、私は心のとまどいをねじ伏せ、王子をにらみ、糾弾する。




「あんたと居ると、それが実現できない!」




だけど、王子は動じない。




「くだらない夢だな、ありきたりだ」

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