六章:逃亡劇

第31話

私は王子に両手を差し出した。手錠のはめられた両手。それを王子に突き出す。




「外してよ、私大学があるの、単位取らなきゃ!」




「行かなくてもいい、大丈夫だよ。何とかなるさ。僕といればいい」




聞き分けのない王子。でも、それは愛じゃない、甘えみたいなもの。




「私はやりたいことがあるの!」




「やりたいこと? どんな」




間髪おかずに突っ込んでくる王子。




「それは…」




私は言葉につまる。苦笑う王子。




「口からでまかせ言っても、無駄だよ。僕の目はごまかせない。巨大なコミュニティーを管理しているとね。不思議と人の感情というのが読めるようになってくる。普通以上にね」




と、王子。妙に意味深な顔をする。




「私の夢…」




うつむき、つぶやく私。必死に脳裏を探り、さまよう視線。




「…ゆめ……」




何かをひらめく私。




焦りとともに整理する間もなくひらめきのまま叫ぶ。

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