第28話
そうして王子は私をチラリ見て、力なく笑う。どこか遠くなる私の意識。なぜだか周囲の音がぐもってくる。
「でも、切り落とす勇気もなく、こんな風にぶら下げたまま、おめおめと生きてますが」
王子は、何もかもをぶちまけた。
そうして、その中には私の決して聞きたくない、本心とやらまで、ものの見事に含まれていた。
王子は悲しく笑う。
だけど、もっと悲しかったのは私である。私は身を乗り出し、王子に問う。
「私とはナゼやったの?」
私の責めるような眼差しに、少しためらいがちに王子。
「それはキミが誘惑するから…」
「矛盾してる…」
私は追撃を許さない。
だけど、私の追撃など、王子には一向にこたえていないようだ。
「そ、僕は矛盾してる。性欲は並の男なみにあるしね。だから、AVも見るし、エロゲーもする」
そう言って王子は、むしろ首をすくめながら私に苦笑ってみせる。私は問う。問いたくはないけれど、問わずにはおれない。
「私を好きじゃないから?」
聞きたくもない答え。
だけど、問ったのは他ならぬ私だ。王子は律儀にも答える。
「わからない。…けど、そうかもしれない」
私は泣いていた。
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