第27話

「だってクローンが…」




私もバカな女だ。


欠片も信じていぬ話を今になって蒸し返す。




「ああ、あれは嘘…」




そこまで言って、王子はすぐさま言葉をひるがえす。




「いや、まるっきり嘘ってわけでもないけど、建前かな?」




そうして、私に向かい小さく笑う。




(建前じゃないよ、王子。トンチンカンな屁理屈だよ)




私は思う。私はなんだか、何もかもが分かってきたような気がした。王子が口に出して言うまでもなく。




そうして、私は王子の本心を王子の口から聞きたいけれど、それ以上に、聞きたくないような気もしていた。だけど、私は両腕を手錠で拘束されている、ゆえに自らの両手で両耳をふさげない。いやがおうにも飛び込んでくる王子の言葉の続き。




「付き合ってることはとっくに知ってたんだけど、やっぱ、やることやってんだと思った。それもショックだったし…」




と王子。なぜか、その言葉にショックを受ける私。なぜ私がショックを受けてしまうのだろう。




「その子、ちょっとそれからオカしくなっちゃってね。ノイローゼってか。んで、地方に戻っちゃって…で、気の抜けた僕は大学を中退…」




王子は決して言葉を止めてはくれない。きっと、このまま私に洗いざらい、全てを吐き出してしまうつもりなのだろう。うつむき瞳を伏せながら王子。




「僕にもそんな風に好きな女の子を傷つける力があるのかと思うと怖くなっちゃった。ほんと、もっと僕に誠意があるなら、チンポを切り落としたいくらい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る