第26話

王子は無口だ。そうして、いつもそっぽを向きパソコンにばかり向かっている。ほったらかされた私はつまらない。




だけど、王子は私のニーズをどこか敏感に察知する。それは、ずっと大きなコミュニティーを管理しているからかもしれない。ユーザーのニーズをいつも汲み取っているから?




どこか心地よさを感じてしまう私。




身動きは取れないし、体は相変わらずガタピシ。だけど、心は?




「…ぉいしぃ……」




私は朝っぱらからたまごサンドの包みを2つも平らげてしまった。ぎこちなくコーヒーのカップを口にする。王子が口を開く、あらぬ方向を向き。




「大学2年の夏に、好きな子が彼氏にはらまされて中絶した」




唐突な言葉に、王子をかえり見る私。




今なぜそんな話題が王子の口から飛び出てくるのかが分からなかった。よりによって、こんなすがすがしい(?)朝に。




私はよほど妙な顔をしていたのだろう、私を見て王子が苦笑う。




「知りたかったんだろ?」

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