第23話
と私。王子はしばらく考えたようなそぶりで瞳をつむると、私を振り向き、苦笑いしながら言う。
「だって、気味悪くない? SEXって、もともと生殖行為でしょう? 自分の半クローンを増やすための」
私は王子の言葉に耳を疑う。
よもや男の人から、かのごとき言葉が出てくるとは思わなかったからだ。王子は言葉を続ける。
「キミは、自分のクローンをどんどん産み増やしたいかい? そうして、産み増やして、地上でも征服する気かい? それとも、勢力を拡大する? 僕は願い下げたいね。別にそんなに自分を好きじゃないから。僕のクローンを僕以上増やしたいとは思わない」
とうとうと王子は語り続ける。
それは飛躍しすぎだよ王子、と私は思う。人はただキモチいいからSEXするんだよ、と私は王子に言おうとした。だけど言わなかった。王子はこの(私から言わせると、ある種独特な)解釈をいたく気に入っているようで、いたくご満悦な態度で言葉を続ける。
「だけどさ、そうやって考えてみると、みんなケッコウ傲慢だよね? ぽこぽこ子供を産んでさ。日々、SEXしてさ。よっぽど、自分が大好きなんだなぁ? と思うよ」
ひねくれた解釈、どこか、いびつにゆがみまくった視点。王子の答えの頭っからつま先までが、違和感に満ち満ちている。そこに私は、えもいわれぬ不自然さを思う。
(それは嘘でしょう…)と
どこか私は思っていた。
(王子、それは、本心じゃないでしょう…)と。
王子はやおら立ち上がる。そうして、私を見下ろしながら言い放った。王子を見上げる私。
「おしゃべりはここまでにしておこう。キミはキミの立場を少し勘違いしているようだね。ここは僕のテリトリーだよ」
王子の一言で、再び私たちの主従関係が明白とされた。王子は、しかし、言葉とは裏腹に優しく私の衣服を整え、だけど、私の両腕をまたも後ろ手に回し、手錠を落とした。そうして、足の手錠はそのままにされてしまった。それは、意図的か、王子のうっかりなのか。何にしろ、私はますます動けなくなった。
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