第18話
王子は、うなづいた私に身を起こさせると、私の右足首にもう一つ手錠を追加した。そうして、右足首と頑強な家具の足につなぐ。ますます身動きが取れなくなった私は、一瞬にして憂鬱になる。今更、手錠が増えようがどうなろうが変わりゃしないのだが、鬱になる。
しかし、王子はすぐに私の背後に回り両手首をの手錠を外す。小さな金属音とともに、一瞬自由を取り戻す私の両手。しかし、すぐさま王子の両手で自由を奪われ、体の前で再び手錠にて拘束された。
(逃がしてくれる…わけ、ないっか…)
気分が重く沈む私の目の前に、突如差し出されるお膳。黒いどんぶりと汁椀にご丁寧に蓋がしてある。そうして、やたら控えめな色のお漬物たち。器を見る限りそれはとても高級なものに思えた。
「どうぞ」
王子がフタを開けると同時に、湯気が立ち上る。天丼だ。エビが信じられないくらいに大きい。私は目を見張る。
こんな目に遭っているのに節操も無く不自由な右手で箸をあやつり、エビにかぶりつく私。上品な天つゆの風味が口内一杯に広がる。そうして、かぶりついた跡を見ると、衣の厚みでかさまししている風でもない。というか、一口食べれば、さほど味覚に明るくない私でも分かる。
「…ぉ…いしぃ…」
監禁されているってぇのに、私のいつもの食事よりも数段豪華なのが、なんだかな…なんだかなぁ…
そう思いつつも、最後の一粒まできれいに平らげてしまう私。
なんて節操ないのでしょう。
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