第48話
そうして森里は脇に立てかけていたショルダーバッグを肩にかけると「…ふ・け・つ」と、すれ違いザマ大輔に小声で耳打ちし、すまし顔でリビングを立ち去ってゆく。
「はぅあ!」
大輔の悲鳴。ショックのあまり、頭を抱えこむ。
「センパイ、気を落とさないで」
そう背後から大輔の肩を叩く斉藤も、美鈴を脇に携え立ち去っていこうとする。
「じゃ! 奥さん、問題はまるまる解決ということで」
仕上げに右手であいさつ一つ残し。また花子に笑いながら、手を振る美鈴。
「じゃあ、オレもそろそろおいとまを…」
今度は大山、よっこらと重い腰を持ち上げる。娘も続く。みるみる訪問客たちがリビングを立ち去ってゆく。茫然自失の大輔を尻目に、すっかりと機嫌をもどした花子がお盆を片手に言う。
「あらあら、みなさん、お茶でもご用意しようかと思いましたのに、何のお構いもできず。ご夕飯でも、どうですか? 大したものはできませんけど」
花子の声の感じから、これまでのわだかまりなどすっかり消えうせたようだ。
「それはまた、今度カレが落ち着いた時にでも」
花子のあまりの変わりように、ちょっとばかり苦笑いの大山。うなだれている大輔をちらり見やる。
玄関先までいそいそと見送りをする花子とリビングに一人取り残されたままの大輔に大きくあいさつをする訪問者たち。
「「おじゃましましたーー!!」」
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