第36話
そうして、二十五分を少し過ぎ、三十二分後。三人目の男性がリビングの扉前に立っている。ややがっちりとした体育会系の体に、黒いスポーツ狩り。ポロシャツにチノパンと非常にカジュアルな出で立ち。大輔の同僚の大山だ。
それと少し遅れて、黄色いワンピースを身にまとった五歳ほどの少女が大山の後からリビングに駆け込んできて、きょんとした顔で部屋の大人たちを見つめている。
「その子は?」と少女を見下ろしながら大輔。少女に太もも辺りをまとわりつかれつつも、大山が片手で構いながら受け答える。
「あーオレの娘、かみさん実家で骨休めしてるから、この土日、面倒見なくちゃなんなくなっちゃって」
「そんな日にわざわざ、こんな遠路遥々呼び出して済みません」
大山の言葉に、ちょっとバツが悪そうに大輔が頭を下げる。
「ああいや、このもう少し先の動物園へつれてくことにしたから、それはかまわないんだけど。それよか、プレミアの野球チケット絶対だよな、4枚。家族分」
最後の言葉は、大輔にこそっと耳打ちするように大山。
「ああ」
二人が大人の事情で会話をしていると、少女が大山の腕を取り両手で振り回しながら言う。
「パパー、ゾウさん早く見たーい! ねーなんでこんなとこにきたの!」
「もうちょっと待ってようね。あとで動物園でアイスクリーム食べよう」
大山の言葉に少女は飛び跳ねてはしゃぐ。
「わーい!ほんとぅ!」
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