第34話
大輔の言葉にため息をついた花子がサめた目で三人を見やる。
「こんな茶番、付き合ってられないわ! 私もう行っていい?」
そうして脇のカバンを手にし、合間にベッドルームに寝かしつけておいていた亜美すらも放り投げたまま、そのままリビングを後にしようとする。
「待ってくれ! 頼む! ゼンブ誤解だから! あと、25分、25分だけ!! 頼む、誤解を解かせてくれ!」
大輔の言葉に花子が少しとどまるようなそぶりを見せる。そこをすかさず斉藤が口を開く。
「そーっすよ! 奥さん、オレもわざわざ時間裂いてこうして来たんだし」
斉藤の軽い失言混じりの言葉に、花子が少し眉をひそめる。そこをすかずフォローな田中。
「奥さん、僕からもお願いします。先輩はそんな人じゃないですから」
そうしてようやく花子は再びソファーの元の位置に腰を下ろす。刻々と時計の秒針は刻み上げるのに一向に時間が進む気配がない。じりじりとしながら、大輔が貧乏ゆすりをしていると、斉藤がふと思い出したように、大輔を振り返り言う。
「あ、オレ、彼女ここに連れてきていいっすか? 車で待たせてるんで。待ちくたびれてるだろうし」
「好きにしてくれ」
少しうんざりした顔で大輔が言う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます