第34話

大輔の言葉にため息をついた花子がサめた目で三人を見やる。




「こんな茶番、付き合ってられないわ! 私もう行っていい?」




そうして脇のカバンを手にし、合間にベッドルームに寝かしつけておいていた亜美すらも放り投げたまま、そのままリビングを後にしようとする。




「待ってくれ! 頼む! ゼンブ誤解だから! あと、25分、25分だけ!! 頼む、誤解を解かせてくれ!」




大輔の言葉に花子が少しとどまるようなそぶりを見せる。そこをすかさず斉藤が口を開く。




「そーっすよ! 奥さん、オレもわざわざ時間裂いてこうして来たんだし」




斉藤の軽い失言混じりの言葉に、花子が少し眉をひそめる。そこをすかずフォローな田中。




「奥さん、僕からもお願いします。先輩はそんな人じゃないですから」




そうしてようやく花子は再びソファーの元の位置に腰を下ろす。刻々と時計の秒針は刻み上げるのに一向に時間が進む気配がない。じりじりとしながら、大輔が貧乏ゆすりをしていると、斉藤がふと思い出したように、大輔を振り返り言う。




「あ、オレ、彼女ここに連れてきていいっすか? 車で待たせてるんで。待ちくたびれてるだろうし」




「好きにしてくれ」




少しうんざりした顔で大輔が言う。

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