第28話

亜美が嬉々としながら、自分の段の引き出しを両手で必死に引き出そうとするも、重くてびくともしない。花子が見かねてタンスを引いてやった矢先だ。




突如開く、ベッドルームの扉。そこには目の前で繰り広げられる光景に呆然と立ち尽くした大輔がいた。大輔は痴呆のように口をおっぴろげ叫ぶ。




「お前、なにやってんだ!」




花子は口端をゆがめ、大輔を見上げる。




「しばらく実家に帰らせてもらおうと思って。私も頭を冷やしたいし。あなたも頭を冷やして。それから、どうするか考えましょう」




そう言うと、花子は残りの荷物を手早くつめ、亜美の腕を半ば強引に引き、廊下に飛び出す。




唖然とし、立ち尽くしている大輔を尻目に花子は足早に玄関先へと向かう。不安げに父を見上げ、また振り返る亜美。早足で母に連れなう。




「わー! 待て! 待て待て待て! 早まるな!」




我に返った大輔が慌てて二人を追おうとするも、足元のダンボールに、け躓きそうになり悲鳴をあげる。




「ってぇ! なんでこんなとこに!」

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