第23話
そう言って大輔はまたもタバコに火をつける。
夫婦喧嘩でのイラつきを抑えようとでもしているのだろうか。普段より今日はタバコを吸うピッチが随分と早いようだ。そんな大輔の様子を目を細めつつ見る花子。
「ダイレクトメールって、なんで業者があなたのメールアドレスを知ってるのよ。そんな風に私をうまくごまかそうとしたって無駄よ」
「知らないよ。けど、どこの家にもくんだよ! 勝手にさー!
ほんっと、わっかんないやつだなぁ!!!」
大輔はいらついたように、乱暴にまだほとんど吸ってもいないタバコをもうねじ消しはじめる。そして、もうとっくに火は消えているというのに、イラついたよう何度も何度もタバコの先を灰皿へとたたきつける。
「なによ、逆ギレ!? 浮気しておきながら、妻に逆ギレ? ほんっと、サイテーね!」
「おまえなぁ! いい加減、俺も怒るぞ!」
「もうとっくに声を荒げてるじゃない! そうやって、脅せば私が黙ると思ったら大間違いよ! ダイレクトメールがね、こんな語り口調で来るわけないでしょ! どこの世界にこんな会話チックなダイレクトメールがあるのよ!」
そう言って、花子は一枚のコピー用紙を拾い上げ、大輔に押し付ける。そうして、口端をゆがめながらそらんじる。
「内容は見なくても覚えてるわ『あの夜のことが忘れられません。あなたに抱かれたあの日、私はわけも分らず乱れました』でしょ?」
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