第19話

「なにすんだよ! おい! …おい! ちょっとまてよ!!」




大輔のシャツにGパン、花子のパンツにブラジャー。子供服、みるみる大輔は洗濯物の山に埋もれてゆく。仕上げにスコーンと!


大輔の額に和樹のスニーカーが一つ命中。もいっちょオマケに洗濯カゴまで投げつける花子。ラストの二品目、こいつはちょっと痛かったようだ。




大輔はキレぎみに、洗濯カゴを脇に放り投げ、べっとりと体に張り付いた洗濯物をかき分けながら花子に叫ぶ。




「なにすんだよ! お前は! それが仕事で疲れて休んでる亭主にすることか!!?」




「仕事? 笑わせるんじゃないわよ!」




間髪おかずに花子が切り返す。




「は?」




怪訝そうな大輔の顔。




「仕事仕事、仕事って言ったら、なんでもかんでも私をだませると思ったら大間違いよ!!」




そう言うと、花子は電話下の引き出しから数十枚の紙の束を取り出してくる。そうして、それをやおら大輔に投げつける。




「この、大ウソツキ! 花子のしあわせライフを返せ!!」




ひらひらと舞う、A4サイズのコピー用紙。




唖然とする大輔の目には、幾枚もの女性からの電子メールが印字されている。それも一人ではない。幾人もの女からの熱を帯びた電子メール。




「まーま」




突然開くリビングの扉。




眠い目をこすりながら朝寝坊していた下の子が起きてくる。緊迫した空気。




「まーま、どうしたの?」




パジャマ姿の亜美が怪訝そうに花子の足元に擦り寄り抱きついてくる。

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