第16話
和樹が初めて立ち上がったときは、事前に買っておいたデジタルビデオで大輔が録画した。そうして二人目の亜美。
つわりを感じたのは「一人目が男の子だったから、二人目は女の子がいいね」なんて、二人で話していた矢先だった。
花子はやっぱり、目一杯、亜美の写真を撮った。だけど大輔は最初の子ほど、熱心でなくって、夢中に亜美の表情を写真に収める花子に呆れていた。
子供たちが駆け回れるまで大きくなると、近所の人からおさがりで貰った大きなダンボール一杯の子供たちの洋服を着せ替えて、チビたちのファッションショーをした。
笑う。花子も笑う。大輔も笑う。
こんな幸せがずっとずっと続くと信じていた。
廊下を少し歩いて、花子と大輔の前まで来るとくるりおどけてターンして、思い思いにポージングする和樹に亜美、無邪気に…
花子はいつしか部屋の片隅で押入れから取り出したアルバムを開いていた。一枚また一枚とめくるたびに溢れ出る思い出たち。涙がにじみそうになる。
夜になり、子供たちをすっかり寝かしつけると、一人リビングのソファーでたたずむ花子。テレビの電源すら入れられてないリビングは息が詰まるほどの静寂に飲まれ、唯一響く時計の秒針の音が花子の心を刻一刻と追い詰めてゆく。
(早く帰ってきて…)
祈るように手を組み、やがて顔を覆う花子。
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