第11話
「ほらほら、泣かないの」
珠代が花子の肩に手を伸ばし慰める。
「だって、麻美が」
そう顔をへちゃげて泣きながらも、やっぱりアイメイクを気にしつつ涙をぬぐう花子。そんな二人をかまうこともない様子で、麻美が一人つぶやくよう単語を羅列する。
「証拠がためする、問い詰める、大喧嘩。離婚、慰謝料を取る」
そうしてため息一つ。
「私が考えるとどーあっても離婚になっちゃうのよねー? やっぱバツ一だからかしら? 浮気を許せない以上はそうなっちゃうんじゃないの?」
と麻美。
「そー言うあんたは慰謝料取り損ねたじゃない」
花子の隣の座席に移り、花子を抱きこむように慰めながら、渋い口調で切り返す珠代。
「だって、女と二人で開き直るんだもん。あったまきちゃって。平手で大ビンタ一発、離婚届に判で、ハイさようなら! あー! 私って損な性格! 今思い出しても、ムカムカくるわ!」
派手に腕組むと背もたれに音を立てもたれこむ麻美。イラついたように組んだ足先のミュールを親指でぶらつかせる。
その様子に小さく息をつきながら珠代。
「そうなのよね~。イザとなると全部全部ふっとんじゃうのよね。頭がかーっとなっちゃって。私も旦那の前カレの浮気が発覚したとき、大変だったもん」
そうして抱え込んだ花子の横顔をチラリ覗き込んだ。
三人は顔を見合わせため息をつく。
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