二章:いよいよ本丸か
第8話
「ええ!?」
喫茶店の店内に珠代と麻美、二人の声が大きく響き渡る。また別の日の午後。とある喫茶店。
「やっちゃったの? 出会い系…携帯で?」
と珠代。唖然顔で花子を覗き、口元に運びかけたコーヒーカップを再びお皿に戻す。陶器のかち合う音がする。フォークで刺し取ったモンブランの登頂のマロンを口に運ぶ寸前に取り落とした麻美が、左右を伺い、スカートの上に転がるソレを素早く口に押し込んだ。
「ううん、会う約束まではしたんだけど、遠くで待ち合わせに来てるらしき男の人だけ見て帰ってきた。やっぱり私に仕返しは無理みたい」
ため息がちにうつむく花子。
花子の前のシフォンケーキはウェイトレスに出されたまま横たわり、上にかけられた紅いベリーソースと生クリームがじわじわと生地にしみこんでいる。
「当たり前よ!」
と珠代、つんざく声で叫ぶ。立て続いて麻美の脱力呆れ顔。
「あーびっくりした!」
「花子、麻美の言葉を真に受けちゃダメよ、この子離婚しちゃってるんだから」
麻美を言葉で押しのけ、勢い身を乗り出す珠代。
「よもや真に受けるとは…」
モンブランを口に運んだフォークの先をねぶり上げて麻美がつぶやく。
「花子、浮気の仕返しなんてダメに決まってるじゃない! それこそホントに夫婦生活が終わっちゃうわよ!」
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