第3話

そこまで言って、花子はとうとう泣き出し始める。最後の方の声は情けないほどに嗚咽にまみれ、だけど嗚咽を押しのけ、無理に話そうとするセイか、語尾が不自然に上がり調子で、聞き取りづらい。




左右の口角が下がりきり、すっかり無様な顔を見せる花子。




「一字一句覚えちゃってるのね」




軽く呆れ顔の珠代。




「もう、何十回も読みました!」




泣き叫ぶ花子に、脇からどこかなげやりな声で横槍を入れる麻美。




「あーあ、そりゃ、やっちゃってるわ。もろよ、もろ! ホテル使用済み! 言い逃れできないわね」




その麻美の言い草にますます泣き出す花子。




「し! そういう言い方はかわいそうでしょ! ほら、泣かないの」




と、珠代が花子にハンカチを差し出す。




「けど、花子の旦那もやるわね。何発やったのか知らないけどさ。そんなにいいの? あっちの方?」

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