7.うっとりと悠久の時

第7話

泣きながら

それでも今しか観れない

美しい花火を

見上げなければと

アリスがうつむけた顔を空に

上げかけたとき


耳に

花火以外の音が

混ざり込んで来る。


「讃美歌か、なんで?」

ハリーがジョンに尋ねる。

「なんで、俺に聞く」

「知ってるんだろ?」

ハリス。


「もちろん、占星術の先生の

指示だ。敵兵の武器を

放棄させるために

讃美歌を流しなさいと」

ジョン。


「大統領御用達のか」

「ご名答」

ハリスの言葉に

ジョンが笑うと。


「花火に賛美歌か」

ハリスが痛みも忘れ

小さく笑う。


「うっとりね」

アリス。


完全に

銃撃戦が止まった。

敵兵も

空を見上げ、

必死に手持ちのカメラで

花火を撮影している。


「神様、神様、神様」

アリスはその場に座り込み

膝を抱え笑った。

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