6.いちゃつけない

第6話

「ダー。

ダーが生きていれば

どれだけ素敵な

ホワイトデーだったろう」

アリスはうつむく。


「俺もアギーにホワイトデーの

プレゼントをしてやりたかった」


そこまで花火そっちのけで

会話をしていた二人に

ハリーが声をかける。


「いちゃつけない、お二方。

写真を贈ったら?」

「写真?」

怪訝そうなアリス。

「花火の!」

笑うハリー。

「あー、なぁる」

ジョンはリュックの奥の

スマホに手を伸ばす。


いつしか、

銃撃の音が止んでいた。


そうして

ジョンは

スマホで花火の写真を

撮り、メールで妻に

写真を送る。


ジョンの妻は生きていた。

すぐにメールが返って来た。


そのメールの文面を

見つめながら、泣きそうになる

ジョン。


「ハリーが言うまで、

スマホでメールなんて送った

ことなかった。

戦争になるまで、毎日

顔を合わせてたから」


「これからは

毎日メールを打てば

いいじゃない。家族が無事か

すぐわかるし」


そこまで笑って言い、

「いーな」

そうしてアリスは泣く。

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