3.もう何も怖くない!

第3話

「ん」

意味が分からず

振り返るハリー、

撃たれそうになるのを

ぎりぎりのセンで

機関銃で守り、

自分たちの位置への

引き戻すジョン。


撤退したハリーの

つま先の一歩前に

機関銃の玉が突き刺さる。


「あっぶね!」

「なんだよ! あぶないのは

そっちだろ!」

「ハリーが変なことを言うから。

もう死ぬんだ! とか」


「あたりまえだろ、

出血多量で俺はもう死ぬんだ!」

ついに堪えていた

涙があふれさせながら

ハリーは叫ぶ。


「もう何も怖くない!」

涙を恥ずかしそうにぬぐいながら

機関銃を持ち、前線に

向かおうとするハリーを

全力でジョンが引きずり戻す。


「なんだよ」

「怖いんだろ! 大丈夫

ハリーは死なないよ、

血もちゃんと止まったろ?」


涙を見られた恥ずかしさに

眉間にしわを寄せる

ハリー。


「待ってろ! 援軍が来るから」

「援軍?」


ドーン!

派手な爆発音と共に何かが夜空に

光る。


「見ろ! 来た!」

この戦線真っただ中に

似つかわしくない、不敵な笑みを見せる

ジョン。


ドーン!

ドーン!

夜空に大輪の花が咲き誇る。

それは幾重にも重なる。

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